概要
Steno はテクノロジーを組み込んだ court reporting(法廷速記)エージェンシーであり、ソフトウェア製品ではありません。2018年にロサンゼルスで、原告側訴訟弁護士の Dylan Ruga、起業家の Greg Hong、CTO の Dan Anderson によって設立され、デポジション(証言録取)、仲裁、審問のために認定 court reporter、ビデオグラファー、通訳を手配し、その上に自社技術を重ねています。リモート手続き向けの Steno Connect for Zoom、スケジュールとファイル閲覧のための Firm Dashboard、そして生成される速記録の上に載る生成 AI レイヤー Transcript Genius です。2026年3月26日には Savano Capital Partners 主導で $49M のシリーズ C を完了しました。2023年5月のシリーズ B までに調達した $38.5M と、2024年5月の追加 $46M に積み上がる形で、地理的拡大と AmLaw 200 への浸透に充てられます。
この区別が評価の仕方を決めます。買うのは Transcript Genius ではなく、デポジションそのものです。AI は追加料金なしで付いてきます。一般的なリーガル AI の購買とは逆で、ここでのソフトウェアはサービス契約を決める最後の判断材料であって、コスト項目ではありません。
Legal Ops のスタックに入る理由
- Transcript Genius は従量課金ではなく標準付帯です。 Steno は、顧客に対して追加料金も利用上限もないと明言しています。速記録に対する完全一致検索とセマンティック検索、長さと焦点で絞り込んだ要約生成、複数デポジションの突き合わせによる矛盾の抽出、行をクリックすると該当映像に飛ぶテキストと動画の同期、そしてすべての回答に付くページ・行番号へのリンク付き引用を備えます。他社が作成した
.txtと.pdfの速記録も取り込めるため、別のエージェンシーが収録した証言も同じ分析に載せられます。Steno は SOC 2 Type II と HIPAA への準拠、会話を AI の学習に一切使わないこと、セッション終了後に AI パートナーがデータを保持しないことを表明しています。 - DelayPay はデポジション費用を法律事務所のキャッシュフローから外します。 Steno は事件が終結するまで支払いを繰り延べます。利息なし、リーエンなし、与信審査なしです。Ruga がこの会社を立ち上げたのは、自分の費用を non-recourse ベースで繰り延べてくれるエージェンシーが一つもなかったからでした。ディスカバリー費用を自社のバランスシートで抱える成功報酬型の事務所にとって、これが乗り換える理由であり、全国規模の既存エージェンシーで並ぶものはありません。
- 案件管理システムの中から発注できます。 Clio と Litify の連携により、ベンダー専用ポータルに移らずに、案件レコードの中で reporter の手配と速記録・exhibit・動画へのアクセスができます。
実際の価格
公開価格表もサブスクリプションもありません。Steno は手続き単位で、約25項目からなるレートカードに沿って請求します。reporter の出頭(時間単位または半日・全日)、原本+認証謄本1通のページ単価、exhibit のページ単価、速記録の製作、そして対面とリモートで別建ての litigation package が基本です。その上に条件付きの項目が乗ります。医学・専門家証言のページ追加料金、速記録の最低料金、不出頭証明書、一部市場での対面出席料、前営業日の現地時間 12:00 PM 以降に入れた依頼への直前予約料金、待機時間などです。さらに動画、realtime、ラフドラフト、特急納品、テキストと動画の同期には、ページ単位または時間単位の追加料金がかかります。
規模感として、2026年の米国市場は標準的な速記録でおよそ1ページ $4.50〜$7.00、出頭料は $150〜$400、4時間のデポジションで通常150〜250ページになります。G2 の Steno レビューでは、以前使っていたエージェンシーより高いという指摘が一貫して出ています。汎用的な地元エージェンシーに対する上乗せを見込んでください。また DelayPay のレートカードは即時払いのレートカードとは別建てで、より高い水準になると想定してください。繰り延べは無料ではなく、料率に織り込まれています。
向いているのは
原告側の成功報酬型事務所です。人身傷害、労働、マストートで、デポジションの予定が途切れず、ディスカバリー費用が和解までずっと事務所のバランスシートに残り、デポジションを申し立てるかを決めるパートナーが実際にはその資金を出すかを決めている、という事務所を指します。DelayPay と付帯の速記録 AI という組み合わせを1本の契約にまとめている全国エージェンシーは他にありません。被告側や混合型の事務所にも当てはまりますが、論拠は薄くなります。リモートデポジションの標準化と、拠点をまたぐ速記録検索が主な利点です。
デポジションを行わないなら見送ってください。企業内法務、取引法務、契約中心のチームは、契約系またはリサーチ系のツールの領域です。変えるつもりのない既存の速記エージェンシーがあり、AI だけが欲しい場合も見送りです。Transcript Genius は単体販売されていないため、入口は手続きを Steno に回すことだけです。
代替候補との比較
Veritext は市場プレゼンス約18% でこのセグメント最大のエージェンシーであり、独自の AI スタックを持ちます。2024年からの Smart Summary に、2026年2月に Smart Search と Smart Analysis を追加しました。カバレッジの厚みと既存の AmLaw ベンダー関係が支払い条件より重いなら Veritext です。約14% の Lexitas はもう一方の既存大手で、入札に加える価値があります。速記、送達、記録取得を1社にまとめたいなら Lexitas です。最も伸びている挑戦者は Depositions by Filevine で、旧 Parrot を Filevine が2025年4月に買収したものです。AI が起草した速記録が数日ではなく数時間で返ります。初稿のスピードが何より優先し、すでに Filevine を案件システムにしているならこれです。決め手がカバレッジでも納期でもなくキャッシュフローなら Steno を選んでください。どれも合わないなら、信頼できる地元の reporter を維持し、速記録を Harvey や CoCounsel のような汎用アシスタントに通す手もあります。他社なら付帯していた分析を、別料金で買うことになるだけです。
注意点
- 価格はページ単価ではなくレートカード全体です。 速記録のページ数だけでエージェンシーを比べると、出頭料、litigation package、対面加算、直前予約のペナルティが見えなくなります。ガード:最初の発注前に完全なレートカードを入手し、代表的な4時間のデポジションを端から端まで見積もってください。出頭、ページ単価、litigation package、動画、同期まで含めて、同じ手続きに対する現行ベンダーの総額請求と突き合わせます。
- 「non-recourse」と「結果に連動しない」は別の約束です。 LawSites は2023年に DelayPay を non-recourse と記述しましたが、Steno がニューヨーク州向けに Clyde & Co. へ委託した倫理分析は、この取り決めが事件の結果に連動「しない」ことを前提にしており、規則 5.4、1.8(e)(1)、1.8(a)、1.8(f) と NYSBA Op. 1181(2020年)を引用しています。ガード:6桁規模の費用を繰り延べる前に、署名済みのサービス契約に recourse の文言を明記させ、Steno が提示する依頼者向け開示文を使い、放棄同意を取得し、自分の法域で分析をやり直してください。この意見書自体が、他の法域では要件が異なりうると述べています。
- Transcript Genius が読むのは確定・発注済みの速記録だけです。 ドラフトや未発注の速記録は、reporter の仕事を守るという設計上の理由から照会できません。つまり AI の価値は、速記録の代金を払った後にしか届きません。ガード:弾劾準備が時間との勝負なら、質問が必要な特定のデポジションにだけ特急納品を買い、残りは標準納期に置いてください。契約時には、速記録・exhibit・動画の一括エクスポートも確認しておき、料率変更で案件ファイルが取り出せなくならないようにしてください。